[サスペンションの物理学]
 サスペンションの項で詳説しますと書いておいたことを忘れておりました。このことに就いては既に、拙著”WHY CITROEN Q&A”の「まえがき」に次いで述べていますが、要点だけ拾ってみましょう。”先ず取り組んだのが[前後関連懸架]の否定であった。何故、2CVに特徴的な方式がDS等のハイドロニュ-マチック・サスペンションにまで拡張されてしまっているのだろうか? この誤りを正すことが出来たのは、つい5年前の「30周年特集」であった。
 今では、めったに書かれていないが 1973年頃の自動車誌やカタログをご覧になれば、シトロエンといえば前後関連と書かれているのです!GSの記事を調べて御覧になれば明らかになりますよ! その議論の最中でさえ、CGの編集長を一時されたシトロエン通の一人とされていたK氏(不思議とK氏ばかり・・・)でさえ、[左右関連あり]とする私の意見には反対されていました!つい20年前の状況はそのようであったのです。左右関連は左右の車高を同一に[そろえる]のを容易にする為であって、ハイトコレクターを一つ節約するのが目的ではありません・・・”と記載しております。
 それに次いで、シトロエン社から発刊されている[高圧油圧システム]に関する参考文献を列挙してありますが、今回、簡単に探し出せたものを並べて「写真」に撮りました。これらの文献の最初に必ず載っているのが、ご存知の3つの「法則」です。(1)Mariotte's Law(断熱圧縮時の気体体積と圧力との積は一定)。(2)Laplace's Equation(ガスの温度が変化する時には上記の体積には 1.4乗が付く)。(3)Pascal's Theorem(液体の釣り合いと、圧力変化の伝達に関する法則)。そこで実車の数値を当てはめて,ざっとした計算をしてみましょう。
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■解説
DSの空車重量:前輪荷重:870kg;後輪:450kg:積載時:1050kg:800kgです。サスペンション・シリンダーの断面積は約 10 平方cmですから、各輪は20で割って、例えば前輪積載時の1個のスフェアにかかる油圧は約 50bar になります。下の略図でも解るようにサスペンションの「てこ比」が約3から5倍ありますから、スフェア1個当り 150bar-200bar になります。従って、P値が3から5倍になるので、V値(500cc)は3から5分の1になります。PV=一定のグラフは双曲線ですから、一番変位量の大きい所を使っていることになり、ガス・バネには適しているところである事が解ります。ジャンボジェットのランディング・ギヤも双曲線で示された数値で油量とガス圧を調整していますが、これは油圧シリンダーであるからです。(Boeing:747資料)

◎ [サスペンション球がブラダ型であること]
サスペンション球の物理学については後述すると記載した折には「車重は4個のスフェアのダイアフラムの総面積で支えられる」と記載しました。この問題に就いては資料は存在しません。ここで「大車林」のシャシーの部(0320)アキュムレーターの項には不活性ガスと流体との隔離方法により、ブラダ型、ダイアフラム型、ピストン型に分類されるとあります。ここで述べられているのはアキュムレーターのことですが、その場合の計算式はPV=一定で内圧と蓄油量との関係は簡単に説明できます。
サスペンション・ スフェアも同一の構造ではありますが「隔壁」で車重を支える点が異なっていると私は考えて来ました。当然、ダイアフラムの両面には同じ圧力が掛かっています。シトロエンが使っているスフェアは「ブラダ型」ですから、この型の空油圧式バネを使っているのは、恐らくシトロエンのみでしょう。当時、日発社長が新聞に「シトロエンのサスペンション・スフェアは工業製品といえるレベルではない」と平気で述べていたのですが、恐らくダイアフラムの弱点を指しているのだと思います。
現在でも皆「ピストン型」ですから、簡単にPV=一定で、荷重により何分の1に圧縮されていると言えば済むのですが、シトロエンの場合には「ブラダ型」ですから、同様に何分の1に圧縮されているとは簡単には決められず、F(力)=S(面積)×P(圧力)を考慮しなければならないと思います。油圧ジャッキと同じ理屈です。
要するに、F=荷重が増加してもPは同じでもSが大きくなることで済むと考えられます。「ブラダ型」をシトロエンが採用した理由は、このようにダイアフラムの面積が増加すれば、単位面積に掛る圧力はパスカルの原理により同じで「シリンダー型」より荷重による容積変動率が小さくて済む利点からであろうと推定されます。すなわち、スフェアの内圧が低くなった時にも、ダイアフラムで「補償出来る」のではないか? と思うのですが、私の間違いかも知れません。


●参考
  ハイドラクティブ・サスペンションへの移行を考える上での考え方を文献;CITROEN XM:E.P.A.から紹介しておきましょう。”Citroen's Velizy Resarh Center では、ハイドロ・ニューマチック・サスペンションが垂直方向では非常に快適であり続けているが、水平方向ではさらなる改良が必要であると知っているので(車体のロールとピッチに対してのコントロール)Casano氏は2つのシステム、即ち、2つのスプリング・レートと2つのダンパー・レートを選択出来るような車を、それも走行中に自動で且つ直ちに行えることが理想であると考えていた。
 それは、今だから言えるのだが、hydraulicsとelectronicsとの「ハッピーな」出会いであったのです”(訳)。 今、われわれは既にこれらの実車,XM等を知っているのですから、さらに述べる必要はないでしょう。
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▲参考文献(RELATION PUBLIQUES CITROEN から刊行されたもの)
*HYDRAULIQUE HAUTE PRESSION 1977;*HYDRAULIQUE 1988;*Hydractive 1990:


◎[ダンパーに就いての資料]
 多くの方々はDS/SMのスフェアとダンパー(SHOCK)について誤解を持っておられると思い、ご紹介しましょう。一体型と分離型とがあります。注意するべきことは、分離型で勝手に変更されたダンパーが混在している可能性がありキチント整理確認するようにとの注意が外国クラブ誌に載っています!

●ここで重要なことがあります。図の下のように1955年にDS19が登場した時から1962年までは、(W/O=with out) バイパス・ホールが無かったことです! そのために、図表の3=0.03mm の薄いダンパー(シム)が入っていたのです。ですから簡単に左右関連と言いますが、左右を連結する配管のインピーダンスと現在のスフェアには無い!極めて薄いシムのことを誰も考えていないことが問題なのです。DS19の設計者は過大なロールのためか?バイパス・ホールを作っていなかったのに、1963年から何故、これを開けて現在のスフェアと機能的に同じものにしたのでしょうか?? 
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by citroenDS | 2005-04-09 13:24 | Citroen 資料紹介


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