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[ デビュー時の DS 19 の真の姿は!]
[ デビュー時の DS 19 の真の姿は!]_c0019483_23115530.jpg[ 最初の DS 19 ( 1955 年デビュー時 )の真の構造に就いて]
◇コメント
 私が最初に疑問に思い記載したのは、ブレーキ・アキウムレターが前後独立に存在した油圧回路図が「誤りであると思はれる」にも拘らず、二玄社刊:シトローエンや BROOKLANDS BOOK に載っているのには「どこかに」その原本があるに違いないと考えたのでした。しかし当時はこの回路図が数年の間のものであり、短期間に何度も「変更された」とは想像も出来ずに、1960 年のカタログ掲載の「説明図」から、この油圧回路図は間違いであろうと結論したのでした。
 従って、これらの真実を教えてくれた CG:"ORIGINAL CITROEN DS"本には感謝するべきが本筋であろうかとも言えるのですが、実際には「かなりの誤記事」があり、その指摘に時間を取られてしまい、感謝の度合いは薄れてしまいました。これが私の「本心」です。 ここで DS 19 デビュー時の「真の姿」をまとめて記載し総括したいと思いました。それは同時に DS のような車が「最初から完成した姿である筈がない」と言う私の最初からの主張でもあります。その大部分は既に過去数ヶ月間に渡り記載して来ましたので、簡単な図と箇条書になります。またどのように「改善された」のかも付け加えましょう。
 結論として言うならば、 1966 年型になって( 即ち、10 年も掛かって) DS は初めて完成したのです!この事実からすれば、完成してから 10 年間生産されたとさえ言えるのです。そして DS/ID の 1/10 以上が何等かの不良部分を持ったままで販売されたと言えるでしょう。
◆解説
1) ハイドロニュウマチック・サスペンション: Hydro-Pneumatic-Suspension:
 このシステム自体は完成していたとするべきでしょう。それは既に 1954~55 年に T.A. 15-Six-H が生産されていたこと、その Road-Test がされており、レポートにてかなり正確に評価されている事実からです。しかし全く問題が無かった訳ではありません。
 ( 1-a ) このシステムを動かす作動油に大きな問題がありました。Castor-Oil → LHS2 に於いて低温特性に配慮すれば、高温で問題を生じてしまったようです。その意味で LHM の採用まで問題は続いたと言えるでしょう。
 ( 1-b ) ハイトコレクターの作動の不安定。T.A.15-Six-H より、この取り付け位置に問題があったのだろうと考えましたが、Autocar: 1955-10-14 に掲載されている Front Suspension の写真によれば、ハイトコレクターの取り付け場所は現在われわれが見る場所にあります。それでは「ダッシュ・ポット」が無かったのではと思うと存在していたようです。車高変位してから再度修正したとの記載が"ORIGINAL"本にありますので、この作動が不十分で「変位時に時間を遅れさせる」時間差の設定が早かったのでは・・と思います。私は実際にこの時差を早くする為に「ダッシュ・ポット」の針孔ワッシャの数を減らしたことがあります。当然、1-a ) の作動油の高温時の粘度低下も考えられます。
[ デビュー時の DS 19 の真の姿は!]_c0019483_22314199.jpg
 ( 1-c ) 1963 年以前のダンパーには「センター・ホール」が無く、代わりに 0.03mm の薄い鉄板がありました。これがセンター・ホールに替わったのも、低振動数での「揺れ特性」に影響しています。センターホールを拡大してみれば簡単に実験できます。
 ( 1-d ) バックオーダーを沢山に抱えて、各種の精密部品製造が間に合ったとは考えられず、恐らくはサスペンション系のオイル漏れは理論値よりも多かったでしょう。したがって、エンジン停止後に短時間で車高を失ったでしょう。この影響はハイドロニュウマティック・シトロエンを表現する「動物的な動作」の原因になったでしょう。
2) DS のブレーキ回路は完成していましたが、革新的なシステムに対する信頼性が一般消費者には充分ではなく、結果としてブレーキ・アキュムレーターを前後に独立して装備することになったものと考えます。 ID のブレーキ・システムの重ねての失敗は「論外」です。
3) クラッチ・コントロール: Hydraulic Clutch Control:
 ( 3-a )これが最大のテーマです。ギヤ・チェンジに関しては問題は無かったようです。単なる油圧による遠隔操作ですから当然問題のレベルが違います。 1 速がノンシンクロであったと言っても、停止してからギヤを入れるのは、ついこの間まで私達でも普通にやっていたことです。より安全のために "clutch-lock"が装備されたので、根本的な問題ではありません。シンクロ・ディレイ・ピストンにより、油圧の掛かる時間を遅らせたり油圧をコントロールしたりと良く考えたものです。
( 3-b ) ブレーキ、ギヤチェンジ及びクラッチの断続には、サスペンションに必要な油圧とは油圧レベルが違います。これをわれわれが実感するには、ボンネットを開けてバッテリーの( +)端子のスターター・リレーでエンジンを廻してみると、この程度の高圧ポンプの回転で、クラッチ・シリンダーがレバーを押し出し始めることが観察できます。

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 その為に初期には「低圧ポンプ」がウオーター・ポンプの横、現在の DS ではガバナーの位置にあったそうです。"ORIGINAL"本ではこの場所の説明写真が載せられていないのは残念です。
 そこで、BROOKLANDS BOOK: Autocar; DS 19 の頁から「イラスト」を載せておきます。実物写真が見られないのは、ブレーキ・アキュムレーター( 前後)が見られないのと同様です!
 この低圧ポンプをアクセルで回転を上げて、クラッチをつなぐための油圧を作るのです。それですから、クラッチをつなぐ操作はアクセル・ペダルを踏むことなのです。トルクの大きい 1st → 2nd への操作の時のみ旨くエンジン回転が合わないと「エンジン・ブレーキが掛かり」運転がスムースでないと「文句」が出るのですが、トルク型エンジンですからアクセルを軽く踏んだままにすれば良いのです。多少「レーシング」したって大したことではありません。

4) ブレーキ・コントロール: Brake Pressure Control Secret.
 今日までシトロエンのブレーキは高圧油圧を「単にバルブで開放してやるだけ」と一般に記載され、考えられて来ましたが、そうではありません。油圧の作用する面積比により踏む力の約 2 倍になるように設計されているのです。この部分に対する誤解が最も深刻であろうと考えます。
 この点では ID では 2 回の失敗の後で、簡易型の DS タイプを採用することになりました。この点の解説の誤りも問題でしょう。
[ デビュー時の DS 19 の真の姿は!]_c0019483_21535986.jpg
5) Castor-Oil 及び LHS2 :
 このフルードを作動油として使用せねばならなかった故に発生した「冷却系」の問題点は、ラジエータ・ダクトを閉鎖型にせず、「排気系」をフロントのラジエーターの下にまで持ち込んだことです。そしてアキュムレーター 3 個をその付近に並べたのです。 それにより作動油の低温での流動性は確保できましたが、一方でエンジンルームの冷却不良を発生させ排熱口をフェンダーに設けねばならなかったようです。
6) LHM が開発採用された時点が、本当に DS が完成したのですから、技術的には DS の発表は早過ぎたと思います。ここでも 10 年後が本当の姿であるとするべきでしょう。 1970 年に生産がピークに達したとするのも「さもありなん」と考えるのです。

 
   
by citroenDS | 2006-10-13 21:21 | Citroen 資料紹介


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