[クラッチ・コントロール]
(1)[クラッチ・コントロール総論]

■コメント
 DS(DX)ではこれらの操作を油圧の助けで軽くスムースに行っています。これを油圧による半自動 [ semi-automatic-transmission ]と呼んでいるようですが、このシステムの理解が一番難しく多くの「誤解を生んで」いるようです。DSの一番大切な部分が「ないがしろにされたまま」で「DSとはなにか?」が紹介されている事は残念なことです。
 私が敢えてDSはDXであると主張しているのは、もしもこの複雑な世界に1台だけの「油圧によるクラッチ・コントロール・システム」が無ければ、DSは単なる大きなGSでしかないのです!しかも、純粋に機械的な装置のみで制御システムを完成した事実は偉大です。
 D model No611では、[Piping for Gear Control ] 1-394に、[ Clutch Control ]1-314/3にそれぞれ記載されていますが、これらをいきなり紹介しても理解困難でありましょう。
 従って、このblogでは、このシステムを構成する装置(部品)に付いて個々に説明しながら、総合的にまとめるのが良いと考えました。
 従って、(1)ギヤ・ボックスに付属する(2)キャブレーターに付属する(3)遠心ガバナーに付属するものに便宜的に区分してみました。

[クラッチ・シリンダー]
□解説
クラッチ・ハウジングの最上部にあるが、大抵の車では既に錆びてオリジナルの緑色は薄れてしまっているだろう。30mm程の径の油圧シリンダー(アクチュエータ)で、人の足の仕事をしているものである。このシリンダーとクラッチ・フォークとは、9cm長のロッドでクラッチ・フォークの調整ネジの中に入って接続しています。
 シリンダー径は2.8cmですから油圧が掛れば相当の力になると計算できるが、回路のとり廻しから一度に「ドン」と油圧が掛るとは思えないし、内部の強力なスプリングから作用時間のラグが計算されているのだろう。クラッチ・フォークは位置から一般の車とは上下が逆になっています。写真で解るようにDSの常でダスト・ブーツ(ゴム)は20年以上を経ても新品同様で驚ろかされます。 「写真参照 」
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 [ parts-number: DX 314 11A 4 ] 輸入したギヤ・ボクスにも付いてきたのでスペアができた。

[クラッチ・ロック]
□解説
 ギヤ・ボクスの蓋の右上に2本ボルトで固定され、内部を貫通しているシャフト(スライド・ヴァルブ)は1、2速のギヤ・チェンジ用の前後に動くシャフトと連結されています。この装置はクラッチ回路の途中に入っていて、運転席のシフト・レバーが1速→ニュートラル→2速と同様に、ギヤもニュートラル時に「ダブルを踏む」ように油圧が作用するものと考えられます。1速→N←2速の時にのみ作動する装置です。1速から2速あるいはその逆の場合にギヤが十分にかみ合ってから、クラッチが繋がるようにする安全装置ということになります。

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◆アドバイス
 上記の装置の内部はレクトラクリーンで洗浄すると汚れがかなり出て来ます。その後はLHMを注入して組み立てる事。これは、全ての油圧装置の分解、組立に共通です。

(2)[キャブレーターによるコントロール]

□解説
 クラッチのコントロールは、多くの装置によりおこなわれていることは既に述べたところですが、キャブレーターによっても行われています。
 これはブレーキ油圧がキャブレーターに働きかけて行われているので、以下に記載する装置によります。
1,写真のキャブレーター左側前に取り付けられた装置により、ブレーキング時にガソリンが絞られるDS専用構造になっており、エンジン回転を下げるのが目的です。エンジン回転を感知する[遠心ガバナー]を介してもクラッチ・コントロールが行はれています。(遠心ガバナーに就いては後述する)
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2,次に、スロットル軸の先端には[リエンゲイジメント・コントロール]なる装置が付いており、クラッチが接続されていないと少ししか回転させないので、クラッチに油圧が掛っているとレーシングはしないのです。クラッチが繋がる(クラッチ・シリンダーから油圧が抜ける)と、この装置からも油圧が抜けますからスロットル軸が自由に回わります。
 1速、後退はガバナーで、2、3、4速はアクセル・コントロールになります。「写真参照」この装置には、小さなレバーがあって油圧の抜ける速度を変えることが出来るので、クラッチが接続するスピードまで変えられるという凝ったものなのです!
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■コメント
 英国ではMTが主流であるから、新品の油圧コントロール付きWEBERのキャブレーターが1個残っていたのはラッキーであった。その上に送料込みで5万円でした。キャブレーターに就いては、別項で詳しく記載することになります。

▲余談
 シトローエン:二玄社刊:103頁の記事を、そのまま引用してみましょう。
 「余談だが、筆者にとってDSの初体験は一種の恐怖だった。ステアリングは軽いだけではなく、小指の先にも反応するほど敏感だし、ギヤシフトはアップ、ダウンの度にエンジンのレーシングか過度なエンジン・ブレーキを引き起こす。一時はDSを操縦するのは金輪際まっぴらだと思いもした。」とあります。
 この本の出版は1972年になっているのですから、私の車と同一のものであるのに、何故、エンジン・レーシングが起こったり、エンジン・ブレーキが過度であったのか不思議です。1速から2速へは多少の回転合わせ(普通のMTのレベル以下)は必要?かも知れないですが、エンジン・レーシングが起こらないような装置があるのに、どんなDSでtestをして記事にしたのでしょうか? 正に、余談中の余談であります。

(3)[遠心ガバナーによるコントロール]

□解説
 エンジンの右前に高圧ポンプのプーリーからベルトが掛っている装置ですが、これはエンジン回転により内部の重りが回転して発生する遠心力により、この装置のスライドバルブを押す力が段々に減少してクラッチ・シリンダーの油圧を抜く=クラッチを繋ぐものです。
 このエンジン回転数は1,000rpm以下の問題であり、高い回転数では無駄に回っている点はロスでしかありません。クラッチ接続の回転数は軸の最先端のネジで調整されます。
 800rpmで半クラッチに、900rpm以上で完全に接続するように調整するのが一般的ですが、好みによって100rpm位は自由に上下することができます。また、右側のブレーキ・キャリパーからも配管されているので、ブレーキを踏むと本体の後部分のチャンバーに油圧が掛かりスライド・バルブを前に押すのと、キャブレーターのガソリンを絞ることによるエンジン回転の低下(800rpm以下)と合いまってクラッチは切れます。1速にギヤを入れて、ブレーキ・ペダルを放すと全く逆の操作が行われますから、半クラッチになりクリーピングを始めることになります。この調整が如何に微妙なものであるのかが理解できると思います。
 実際にはエンジン・アイドリングとLHMの粘度は、周囲の温度により影響を受けますから、もっと複雑に変化して来るのです。だから、クラッチ・コントロールが良好に調整されたDSには中々出会えないのです!!!

■コメント
 以上のように、クラッチ・コントロールは1,ギヤ操作2,ブレーキ操作3,エンジン回転とにより行われますから、このエンジン回転を反映する遠心ガバナーが重要なのです。正にこの装置を持っている車はDS以外には存在せず、この装置が壊れれば車は走ることが出来ないのです。
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 私のDSはベアリングから騒音がするので、構造図を良く見ると前半部と後半部を簡単に分離出来そうに思えたので、後方から3本の11mmボルトを緩めると前半分が押し出されて、前後部分が分離されました。後半部分の中心にヘソがあり(スライドバルブ)ガバナーは回転すると開き、中心部に小さなベアリングが前方に出るので押さえられていたスライドバルブが出て、油圧回路が開かれクラッチ・シリンダーから油圧が抜けてクラッチが繋がります。前半分を分解した「写真」を参照して下さい。新品が$170と安かったので購入しておきました。本体前面にDS 31447と刻印があります。

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◆アドバイス
 オリジナル・ベアリングはシーリングの無いSKF 5201で、JBMのカタログに特殊なベアリングで$29と。
 air-mail代を入れると$40になる高価なもの。到着したものを見ると特殊なものではなさそうだ。外周縁にSMT5201と刻印されている。ISO番号のような気がしたので、NSKの資料を調べると[複列アンギュラ玉軸受]の項で簡単に発見できた。「呼び番号」5201の国際規格品であり¥1000である。
 ベアリングは全て国際規格品であるのですから、パーツ・カタログのサイズから天下のNSKのベアリングが1/ 5で買えるのを忘れないで下さい。

 ○他のベアリングに就いては、それぞれの項で記載します。
 ○フロント・ブレーキ系からのエア抜きに就いて、ブレーキの項で書き落としましたので記載しておきますと、左側はキャブレーターの前のガソリンを絞る装置にあるキャップ、右側は遠心ガバナー後部のキヤップ(前はクラッチ・シリンダー用、後がブレーキ用)から行います。
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by citroenDS | 2005-02-08 04:14 | DS の整備と解説


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