[ CASTOR-OIL と最初期 DS19 ]
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[初期 DS の理解に必要な事]
◆コメント
 最初期の DS19 を考える時、どうしても「行き当たる問題」は LHS ( 植物油系化学合成油です) に付いて私に殆ど知識が無いことです。この問題は LHM が開発されるまでの DS を支配してきた大問題であったと言うことは、先回 T.A.15 Six H に付いて紹介している時に気が付きました。そこでCG"ORIGINAL"本のこの項とブレーキ・フルードの項を読んでみましたが、全く異なった物質であるとは考えられず、むしろ「同一のもの」を違うように書いてあると想像されました。すなわち、初期 DS19には( 15 Six H )との期間からも「ブレーキ・フルード」とあまり違ったものになる時間がないと思いました。

◆"ORIGINAL DS"本には 37頁[ 油圧システム用オイル]の項には以下のように記載されています。「1955~64年までの初期モデルでは、様々なヒマシ油をベースにした赤いオイル CH12 (カストロール HF,ロッキードHD19)を使用していた。その後、1964年から 66年までの間は、LHS2 という化学合成された赤いオイルに変わった。・・中略・・いかなるシトロエンの油圧システムにも、普通のブレーキフルードは使ってはいけない。」
 しかるに、80頁の ID の「ブレーキ」の項には以下の記載があり「矛盾」があると考えられます。「1958年初めに登場の 2番めのブレーキシステムは、マスターシリンダーには、フロントサスペンションの油圧回路とを結ぶパイプが追加されており、作動ストロークが一定以上を超えると制御バルブが開いて、サスペンションの高圧オイルが前後ブレーキに送られる・・・中略・・・高圧のオイルがマスターシリンダー内に流れ込み、ブレーキ用リザーバータンクに逆流。メインリザーバーへ戻るオーバーフローパイプは・・・」と結局は両者が「混合してしまう」ことが条件にあると思はれます!
このシステムの設計はどうなっているのでしょうか?疑問を持ち続けていました。
 さて、BROOKLANDS BOOKS を「隅から隅まで」読んでみますと、いろいろな事実が記載されています。この問題については、The Motor:Road Test No.20/58 :ID 19 De Luxe ,P-19 の Maintenance の項の [ Brake Fluid ]・・・Castrol H.F. と書いてあるではありませんか!これでは「油圧システムにはブレーキフルードは使ってはいけない」と記載されているのに、同じ[ Castrol H.F.] が共に使われていては「おかしくはありませんか?」 それとも、「油圧用オイル」が「ブレーキ用フルード」に使用してあるのでしょうか?

 そこで「植物性油脂」に就いて[ 万有大百科事典 ]で調べてみました。この中で特に「ひまし油= Castor-Oil」に関する性質が DS19 の初期の変遷の根底にあるように思います。
◇解説
 ”油脂”は脂肪酸とグリセリンのエステルすなわちグリセリドを主成分とする物質で、油脂のうち常温で固体のものを脂肪と、液状のものを油( oil )といいます。常温での状態によってこのように分けても、その状態は「温度」によって相互に変化するのですから、明瞭にこれらを区別することは出来ないのです。ここが重要なのです!最初の説明=脂肪は脂肪酸とグリセリンに分解されることは、義務教育のレベルで教えられていますから、ここまでは難しいことではありません。グリセリンは 2価アルコールですし、脂肪酸は TV コマーシャルでお馴染みでしょう。「ひまし油」であろうと「化学合成油」であろうと、植物油は CH と OH基を持っていることは同一です。ここで「酸化され易いこと」と「吸水性を持つこと」等の性質が生まれます。燃料タンクの水抜き剤は 100% アルコールで、この性質を利用しています。 ここでかなりの解説をとばして「油の分類」にしますと、油脂→脂肪油→植物油→不乾性油と進みますと、この内で「ひまし油」に至ります。さて「ひまし油」の主成分はジオキシステアリン酸で、ここからが重要になりますが、凝固点(℃), -18~-10 であることです。日本ならばより低い温度である「椿油」が使われたでしょう。「オリーブ油」は 0~6 ですので使用できないのです。
 要するに、より低温まで「オイル」でなくては使用出来ないと言うことです。スエーデンには古くからシトロエンのディーラーがありましたし、-20 ℃位の低温は珍しくないでしょう。これは北欧ならずともヨーロッパの冬では低温特性が大切だったのか!と思いました。これは私の想像ではなくて事実でしょう。また、ブレーキ・フルードとしても同一条件ですから、エンジンルームを保温する設計が欠かせないことが理解できるでしょう。メイン・マフラーが車の先端部=ラジエーターの下に持って来られている理由でしょう。
 もう一方の条件は「高温特性」でしょうが、エンジンルームの温度がいくら高くなっても「ひまし油」としては問題はなかったと考えます。それでは、どうして DS19;'60~'62 には両フェンダーに換気用グリルが必要になったのでしょうか? そこで、これは「どこの換気か?」と Mr.Jerome に良く解かる写真と説明をお願いして、送ってもらったのが下の写真です。エンジンルームの換気で、写真では「蓋がされている」ことになります。フランスでは [ ASH-TRAY ]=灰皿と呼ばれていたそうです。何故この期間だけなのか?等の理由は解からないようです。兎に角、このような回答ですので、室内の換気用であろう・・と記載した部分を訂正します!!
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↑ 蓋がされているようですが、ここは本来外気が通るようにフェンダーが造られている所ですので、内部を見たいものです↑
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← ID 19 P 1957 のブレーキフルード・リザーバー( LOCKHEED )
◎この理解のためには、ブレーキ・フルードに就いて「大車林」から引用しましょう。「ブレーキやクラッチの作動液として、圧力の伝達に用いられる液体。石油系の潤滑油ではなく、エチレングリコールやグリコールエーテルなどの石油化学製品を主とした合成化学溶剤からなっている。水分が入りこんだときにベーパーロックを避けるため、沸点が高く吸湿性を持っている。水分含有量が増えたものでは、新品で沸点が 200 ℃以上あったものが半分に近く下がってしまう」と記載されています。これではマフラーの上で、ラジエーターの隣では問題が起こる心配が出てくるでしょう。
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   ↑1960-DS-19: 排気系とメイン・アキュムレーター/レギュレーター、リザーバー等の位置関係に問題がありそうだ!ギヤボックスの直ぐ左側にあるし、下にはメイン・マフラーがあるのです!冷却ダクトも不完全だ!

◎化学合成と言う意味は、LHS でもここで使っている意味でも、分離した分子式など明瞭な物質を求められる性能に合わせて「合成」するので、石油系でも植物油系でもそれほどの違いはないと理解するべきです。

▲高圧作動油としては別の問題があります。ベイパーロックということは、水が水蒸気になる( 気体)のですが、高圧下では気体は圧縮されて「存在出来ない」のです。従ってハイドロニューマティック系としては問題は発生しない筈なのです。しかし「水分は高温、高圧下」ではオイルと化学反応が発生するのかも知れません。私はこの有機化学の分野は特に解からないので、どなたか教えてください!

▼いずれにせよ、初期 DS19 の「改善は頻繁」に行はれていますから、次回、もう一度 CG"ORIGINAL"本の総括を兼ねて、最初期 DS19 の「変遷」をまとめておきましょう。
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by citroenDS | 2006-10-01 22:20 | Citroen 資料紹介


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