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[ORIGINAL CITROEN DS の誤り:そのⅡ]
[ORIGINAL CITROEN DS の誤り:そのⅡ]_c0019483_1481594.jpg←from:Le DOUBLE CHEVRON :No 2. 1965.

◇コメント
 今回は、理屈抜き、議論抜きの「誤り」に就いて書きましょう。あまりにも初歩的で困ったことです。訳者の小川氏がどの程度のシトロエンの油圧システムの知識がおありなのか?不明ですが、メカニズムに関する頁は十数頁でしか無いのですから、DS の時にはどう訳したのか、 ID の時と矛盾していないか?位は確認して欲しいものです。自分が訳した日本語が読者が読んで解かるものであるのか検討したのでしょうか?
 80 頁:[ ID ベルリンのブレーキ ]の項です。 ID のブレーキは TRACTION AVANT のブレーキ( ロッキード製の普通のもの) を使って生産を始めたのですが、予想通りにブレーキの効きが悪くて 1年もたたずに改良しなければならなくなりましたが、高圧油圧回路を一部導入した 2 回目も失敗で、3 回目のブレーキ・システムを開発( このような DS のものを流用したような際は不適切だ ! ) しなければなりませんでした。結局は回り道して DS の簡易型になっただけなのです! この事実を( メカニズムの理解 )翻訳者は理解していたのでしょうか?
 その 3 回目の回路の説明です! 1961 年 9 月、4 年で 3 回めのブレーキシステムが登場。( Site: Oldest ID 19 in the world...1957 の人が書いている!) DS のように高圧油圧システムによるもので、DS の後輪荷重による「踏む力の分配装置」はありませんが、前輪はメイン・アキウムレータ-からの、後輪には後輪荷重による油圧をそれぞれ作用させるもので、しごく当たり前の結論に「回り道」をして達した訳です!この ID 19 の図は[ ID,DSecial,DSuper '66-75 の油圧ブレーキ ]( 2006-06 )に記載してあります。
 ”この ID 用ブレーキシステムで最も重要な役割を果たすのがブレーキ・コントロール・バルブである。前後一列に並んだスライド・バルブで、独立した前後 2 系統のブレーキ回路の油圧を制御する。内部には巧妙な相互作用機構がリヤーブレーキの作動がフロントよりもわずかに遅れるように設計されている。( 中略 )
 レスポンス良くブレーキを制御する仕組みは以下の通りである。 まずペダルを踏むと、バルブが開いて前後のブレーキ回路に油圧が送り込まれる。ペダルの移動が止まると、バルブはブレーキ回路自体の背圧によって押し戻され、送出圧力と供給圧力の両方が遮断される位置でバランスして止まり、再びペダルが動くまでブレーキ回路の油圧は閉じ込められる。このブレーキ・コントロールバルブはその後シトロエン GS にも採用された。
 ただし、この油圧アシスト付きブレーキを備えた ID も、ブレーキ・アキウムレーターを持たない。その代わり、蓄えるオイル量を増すためにメイン・アキウムレーターの設定圧力を 60 バールから 40 バールに下げた。”
”・・・”の間は原文のままです。
◆解説
 上記が、最終版 ID のブレーキ回路の説明ですが、約 1 ページを使ってよくも「でたらめ」を書いたものです。ブレーキを踏むのに、このような都合良い踏み方や止め方ができるのでしょうか? また、流体は圧縮できませんから、閉じ込めても圧力はその時には "0" になってしまいます。流体は力を伝達はしますが、気体の圧縮圧力がその時の流体回路の圧力なのです! 一番最後の 60 バールから 40 バールに「下げた」とは、間違っても書いてはいけません! 圧が下がると「蓄油量が増える」のであれば、アキウムレーターの交換は「永久に必要無い」ことになります! 具体的に「油圧と蓄油量」の関係を計算しておきましょう。  
 スフェア、アキウムレーターはダンパーの有無だけで、油圧とガス容積との関係は P ×V =一定 の公式で決まります。 400 cc からガス容積を差し引いた容積が「蓄油量」になります
 そこで、 V = 400cc, P = 60 bar とします。 メイン・アキウムの圧力を CUT-OUT 170 bar としますと・・・ 60 × 400 = 170 × V1 になります。
 24,000 /170 =141.1cc-- V1 , CUT-IN ; 140 bar として、 24.000 / 140 = 171.4cc-- V2  ですから、V2 - V1 = 30cc--A ( 60 bar の時の蓄油量 )
次に、 40 bar の時は、 40 × 400 = 16.000 , 同様に:16.000 /170 = 94cc-- V'2 , 16.000 /140 =114cc--V'1 , V'2 - V'1 = 20cc--B ( 40 bar の時の蓄油量 ) A - B = 10cc になります。
*当然、 60 bar の時が 10cc 多いのです!( あまりにも初歩的な誤りですね!)

○ブレーキ・コントロールバルブの方ですが、DS 式ではコントロールバルブが前後独立に「並列」に並ぶだけのことで、ID 式では、単に踏む力の方向としては、直列に( タンディムとも書かれる) 並んでいるだけのことです。上が前輪用でピストンの中心に開けた通路による「背圧」によって下の後輪用を押す順番になるだけのことです。
  43 頁に戻れば、[ DS ベルリンのブレーキの項 ]に同じことが書いてなくては困るのです!本来そうあるべきなのですが?? DS の項の説明のほうがややましですが「正解」ではありません。上の ID 式の説明では「何が何やら解かりません」し、DS 式を書いた人と違う人が書いたのでしょうか??
 
◎この問題に付いては私がシトロエン広報刊の "HIGH PRESSURE HYDRAULICS "の説明では納得出来ないと書いて来ました。いわく「圧力変換器」であり 10kg で踏めば 20kg に倍加するといきなり言われても賛成出来ないとしてきました。古い資料を探していたところ、シトロエン広報から上記の資料の前のものが見つかりました。[ COMMANDES ET ASSERVISSEMENTS HYDRALIQUES ]と題した 29 頁のコピーで、Gerard LORIEUX 氏が送ってくれたものでした。これらの資料どうしを比較して見た所、断面図が 3 枚省略されていたのです! "HIGH PRESURE HYDRAULICS" ではこの図を省略して、経験的に約 2倍にすれば良いとの結論だけを書いてあったので私は納得出来なかったのです。
[ 図-1](左)                                         [ 図-2](右)
[ORIGINAL CITROEN DS の誤り:そのⅡ]_c0019483_14165878.jpg
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 この資料により省略されていた 3 図を紹介しながら、説明させて頂きたいと思います。 [ 図-1] ではブレーキを踏むことにより( R )油圧回路が開かれて「作動油の流れ」が書いてあります。ブレーキシリンダーへの圧 Pr= R/S で、下端の部屋( Chamber)には反力( F )が発生して( R )に対抗して「踏みごたえ」になります。この力( F ) = Pr ×S になります。 [ 図-2] はブレーキを踏む力が弱くなった時で、F が増大しています。作動油の流れも逆に記載されています。 [ 図-3] では下端の Chamber にはダッシュ・ポットの働きがあり、油圧回路には内部のシリンダーの保護、ショックの吸収のために必要なのです。
[ 図-3](左)
[ORIGINAL CITROEN DS の誤り:そのⅡ]_c0019483_1430299.jpg
[ORIGINAL CITROEN DS の誤り:そのⅡ]_c0019483_14314099.jpg

**さて、約 2 倍の増幅作用に就いての説明です。これは「理屈ではありません」でした。シトロエン社の繰り返しの実験経験から決定されたもので [ SECRET ]でありました。"from experience time and time again"で決められたものです。即ち、コントロールバルブ・ピストン径 0.8cm=面積が 0.5 c㎡ は「経験的に」決められたもので大変意味のあるものなのです! やっと 15 年ぶりに解決できました。これらの資料は 1978 年ですから 30 年とするべきでしょうか。
▲[ 高圧ポンプ]に付いては、DS ベルリンに就いては、36-37 頁に記載してあるが 7 ピストンの 1 回転あたりの吐出量は 2.85cc とありますが、これはポンプの 1回転であって、エンジン 1回転では 2 倍の 5.7cc になります。
 一方で ID ベルリンでは、シングル・ピストン・ポンプがカムシャフトの偏心による往復運動によってとしか記載されていません。実際には 1往復で 1.18cc/ストロークでしかないのです。( 2006-06 )
もしも、60 bar を 40 bar にしたのが事実であれば、このポンプの能力不足のためでしょう。
by citroenDS | 2006-08-16 14:12 | Citroen 資料紹介


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