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[ HYDRAULICS と Paul MAGES ]
◇コメント

 DS の油圧システムを完成(?) させたのが Paul Mages で、デンマークの 30 周年記念誌より彼の顔写真を載せることが出来ました。シトロエン DS の HYDRAULICS の全てを「苦労のすえに」完成させた吾が師であり,事実シトロエン社でも「教授」と呼ばれていたそうです。しかし、実際には写真のように「小柄なあまりさえない」努力の人であったようです。
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 私のブログは「教授に提出する論文」なのです。シトロエン社の油圧の「秘密」を研究した論文です。ここで拙著"WHY CITROEN Q & A":1989-03 に記載した「油圧の計算」からも、サスペンションに必要な油圧は「非常に高圧」になりますが、その他の装置に必要な油圧は「一桁低いもの」であろうと考えられます。事実、ブレーキ・シリンダーやクラッチ・シリンダーは 1~ 3 ミクロンのサイズのピストンとシリンダーの組み合わせではありません。これらは、ゴム・シールを使っていますから、その使用油圧は「別のレベル」で考えなければなりません。この問題点を再度記載してみたいと思いました。

◆ 解説
  まず、ハイドロニューマティク・サスペンションに必要な油圧のレベルを考えてみました。 WHY CITROEN Q & Aの P-41 にサスペンション・スフェアと車重との関係から検討しています。
 サスペンション・シリンダー径の面積= 10 平方cm 、サスペンションのテコ比 1:3 から、前輪荷重が大きいことから ( 車両総重量:1.645kg ) 各前輪荷重を 500kg とすると、テコ比× 3 で 1.500kg 、サスペンション・シリンダー径 10 c㎡で割って 150kg/c㎡= 150bar になります。じつに荒っぽい計算で、車重をダイヤフラムで受けているのではないのか?と私自身の「疑問」は前記しています! 重心移動等の考え得る荷重変動を考慮すれば、この油圧程度とまずは考えておきましょう。 
 DS 等のサスペンション油圧のレベルは高圧ポンプの出力、レギュレーター( 140~170bar) の調整範囲の値でしょう。
 自動車誌を見ていると、折角サスペンション用の油圧があるのだから「使はない手はなかろう」と言った書き方ですが、Mages 教授はこの油圧を他の装置に使用するのに「苦労している」のです!私はそう思います。
 これも自動車誌の書き方ですが、ブレーキは「単に油圧を解放してやるだけ」、言い換えれば、O か X かの考え方しか出来ないのです!
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 そこで、HIGH-PRESSURE-HYDRAULICS: 1977, に記載されている "THE SECRET OF THE BRAKING SYSTEM " から、主要な解説図を載せてみます。
↑( 1) 普通のブレーキング・システムで 初期の ID 19 も含まれます。
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 ↑( 2) ○か×の Tree Way Tap (Height Corrector Type) です。
 ↓( 3) が Citroen DS /ID の Braking System です。「圧力変喚器」と称しているこの 1つのユニットが、 DS では並列に、 ID では直列に並んでいるだけのことなのです。しかし、この図ですと高圧 170bar があっても、無くても結果は同じになりわしないか?と疑問に思うのです。単なる面積比の計算をして 10kg が 20kg になるというのです。
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 この( 3) には私は当時から疑問を持っているのですが、未だに解決できていません。ところが、HYDRAULIC CONTROL CLUTCH & GEARBOX の Dr. Nijimann も同じ記載を「この通り」に書いていますので、私の考えは取り合えず保留しておいて、彼の文章を日本語化することから始めましょう。
 HYDRAULIC CONTROL OF CLUTCH & GEARBOX の項を日本語化させてもらった、Web-Site の[ BRAKING SYSTEM ]の項より、重要と思はれる点を記載してみましょう。
 [ ブレーキ・ペダル装置 ] 1) ブレーキペダル一式  2) 油圧コントロール・バルブ  3) 作動油圧警告灯  4) ブレーキ圧分配器 からなります。 これらの内、3) の作動油圧警告灯に付いては、メインアキウムレーターの油圧スイッチによりと記載してありますが、実際にはこの装置のスイッチあるいはプライオリティー( 優先 )バルブにも装置されているスイッチ( 両方にある!)により、 60~80bar に低下すると点灯し、かつ[ STOP]の大きな照明がダッシュボードに点灯します。
○作動:*ドライバーがブレーキを踏む。 *油圧分配器が力"F"を受ける。 *スライドバルブが下方に動いてリターン・ポートを閉じ、高圧ポートを開く。 *前後回路に P & P' が発生する。  *これらの油圧はスライド・バルブの下端にある( chamber γ )からペダル感覚を発生させますが、この反応は力"F"としてバランスします。
 これを数式で示せば、 F =( P +P') S となります。 この後の記載が問題です! 
○この二つの油圧の合計はドライバーがペダルを踏んだ力に比例しますが、( independent of the supply pressures ) この回路に供給された油圧とは独立したもので、ドライバーが踏んだペダルの力によるのであり、言い換えれば、ドライバーがブレーキの効き方をコントロール出来るのです。と書いているのです! これでは作動油の圧力( 少なくても 80bar 以上) は「在っても無くても」同じになりますので、私は納得できずに 10 年以上を過ごして来たのです。( Front Suspension: 85-110bar, Rear Suspension: 50-90bar :当然各車輪の荷重によるが・・)
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○ところが、同じ Site にある、"The Oldest ID 19 in the world...1957 Citroen ID 19 P" には( 既に紹介している) 以下のように書かれています。 The brake fluid reservoir without return pipe. The oldest ID's, of which only a handful survived, were equipped with an independant conventional brake system. The brake pedal is therefore of the classic type and NEEDS a LOT of FORCE to STOP the CAR. 車( ID 19)を停めるには大層な力を必要としました。
 In February 1958, Citroen equipped all ID models with the slightly improved brake system with an emergency connection to the HIGH PRESSURE HYDRAULIC SYSTEM, which also fed the brake reservoir.
○ 1958 年 2 月: ID 19 のブレーキ系に高圧油圧システムを一部リザーバーに接続した緊急処置が導入され、やや改善されたのです!!とのことです。
◎以上の二つの記載は矛盾しています。前者では高圧油圧は無関係としていますが到底納得できません。後者の記載から、如何に ID 19 のブレーキが「効かないものだったか」が判明しますし、HYDRAULICS を一部導入して改善を試みた事実が判明します。高圧油圧を「普通のブレーキ回路」に接続したようです。この事は「私が主張している」高圧油圧回路のスライド・バルブの「開口面積」= S が関係せねばなりません。
◎試みに、フロント・ブレーキ・シリンダー径: 60mm, リヤ・シリンダー径: 18mm, Break; 20mm です。  
   私の考えは F = P×S で、踏み加減により開くスライド・バルブ内面積 ( S) とアクチュエーター( 上記)との面積比によると考えています。
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▲Paul MAGES 先生に申し上げたいことがあります。 Brake System に於いてブレーキ・アキウムレーターの意義は「思った程」重要では無いと存知ます! 既に、サスペンション・スフェアという蓄圧装置がありますので、1回緊急停車するには充分な筈ではありませんか!アキウムレーターに普通に蓄油できる量は Max 30cc 程度なのですから。
 それにしても、最初の数年間の「どたばた」は弟子としても、いささか「見っとも無い」とおもいますが・・・もしも逆止弁がなかったら、3 Spheres になり、ACTIVE SUS になってしまいますよ!
by citroenDS | 2006-08-04 23:49 | Citroen 資料紹介


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