■コメント
前回、北米のクラブ誌( CITROENTHUSIAST )に投稿して掲載されたことを書いたので、この記事を改めてまとめ直してみようと思いました。この時のタイトルは” Driveshaft Removal and Refitting ”と一般的なものにしたのですが、真意は”Citroen DS & ID 1955-1975 ( Brooklands Books )”の記事に対する「批判」を書きたかったのでした。北米の会員に私の拙い英文で本意が伝わったかどうか不明ですが、要するに、Brooklands Books にはドライブ・シャフトのダスト・カバーのシールがあたかも完璧であり、ドライブ・シャフトの交換が簡単であると記載されているのですが、それは全くの「偽り」であって、もしも正しい作業をすれば、それ程簡単では無くてかなり手間の掛る作業ですよ・・・と指摘したかったのです。恐らく、”replaced in a few moments”と書かれた作業では、次の2つの作業をキチント行っていないのです。 1)巨大なハブ・ベアリングの中のピボット( Pivot with Hub )にある「溝」にインナー・シールを入れていない作業であること。2)インナー・ダストカバーを「おむすび形」のハウジングにかぶせて普通のバンドで締めても、決して内部の(三つ又ジョイント= Drive Hausing with Rollers )のグリースの漏れ出しを止められないことです。これはディファレンシャル側の TRI-AXLE は前後左右に自由に動くことで「等速性」を保っているので、ダストカバーはポンピングをするので内部のグリースが出てくるものと考えます。 ごく表面的に見ればDSのドライブ・シャフトの交換は実に簡単なものです。インナー・ダストカバーを外してドライブ・シャフトをピボット( Pivot with Hub )の大きな穴から抜きだせば良いのです。取り付けはその逆です。多くの作業は恐らくその通りに行われているのでしょう。これでは採点は×です! それだから、前輪ホイールの内側はグリースで真っ黒に汚れているのですし、インナー・ダストカバーとドライブ・ハウジングとの接続部の周囲は漏れ出たグリースの「はね」で汚れているのです。 多くの整備書には、インナー・シールの図はどれも違った絵が描かれています。実際のものは、ドライブ・シャフトを抜き出したあとのピボットの内面の「溝」の幅のリングで、整備書で見たものとは違っていたので、注文して届いた部品が正しいものかどうか「確信が持てない」でいました。 投稿記事にも書きましたが、4組のバブとドライブ・シャフトを分解してみたところ、インナー・シールが組込まれていたのは1組だけでした。私のDSにもありませんでした! 実に、正しい率は4分の1以下でした! ドライブ・シャフトは確かに抜き出せますが、かなりピッタリでインナー・シールを溝に入れてしまってからでは、ドライブ・シャフトは通らないのです。従って、何時インナー・シールを組み込むのかが「問題」なので、それがとても面倒な作業ですから、恐らく省略されているものでしょう。或いはステアリング時に「ちぎれた」か「外れた」のか・・・でしょう。皆さんのDSの前輪ホイールの内側がグリースで真っ黒でしたら、インナー・シールが入っていない証拠です。ここに投稿を転載しましたが「記事と写真」のように正しくインナー・シールをピボットの溝に装着すれば、ホイールの内側はこのように「きれいな」筈なのです。 次に、ドライブ・ハウジングとインナー・ダストカバーは、いくら指定のバンドで締めても決してグリースの漏れは止まらないのです。三角を丸で締めるのですから、普通の方法ではダメなのです。それに径が大き過ぎるのです!その解決の為にネジ式の大型バンドを製作したものを図解して紹介したものです。 40cm 長の製品が入手出来れば問題はありませんが、このサイズになると当然幅が広くなり、厚みも使用できるものではありません。古いモデルではハウジングが小さく円形でしたから問題は無かったのです。それとDS23では最終モデルでは、アウター・ダストカバーはゴム製ではなくてウレタン製であることも紹介したのです。「写真」 ●参照項目 [DSの50の安全性 ]の32[ a pivoted hub wheel ],33[ an axle shaft ],36[ a front axle ] をもう一度読みなおしてくだされば、DSのフロント・サスペンションはホイールが上下してもアライメント(特にキャンバー)は影響を受けない設計になっていることが解ります。 □解説 殆どの内容をコメントで記載してしまいましたので、解説することはあまり残っていません。ドライブ・シャフトを整備し交換する目的は、インナー&アウター・ダストカバーの交換が必要だから行うのでしょうから、この問題は次項で詳しく記載します。 私のDS23パラス-74年式のアウター・ダストカバーはウレタン製でしたが、どうしたことか殆ど同時に原因不明で「写真」のように千切れ飛んでいました。勿論ウレタン製は入手困難で、取り合えず手持ちの予備のドライブ・シャフトに交換しました。先ずフランジの2本のリテイニング・スクリューを取り、インナー・ダストカバーのバンドを外せば、ピボットの穴から抜き出せますが、その重量にはいささか腰が痛くなります。 GS、CXとは違ってダブル・ヨークですから(十文字= Crosshead が2個直列のダルマ)一層重量があります。内側のダルマをアウター・ダストカバーが受け持ち、外側のダルマはピボット内にありますからステアした時にはグリースをインナー・シールがグリースを掻き落として外に出ないように設計されているのです。フランジの孔にハブ・ボルトが入った状態の時に、ハブの内側から外側のダルマとピボットとの隙間から内部の溝にインナー・シールを押し込むのです。インナー・シールはグリースを掻き出す為に凹凸があり、その径は外側が小さくて、内側がやや大きく作られています。ダルマの曲線に合わせてあるのです。巧く溝に入ったならば「ゆっくりと」「均等に」外側のダルマを押し込まなければなりません。そうで無いとシールが一部分が出て来てしまいますから、ハブ・ナットを均等に締めて行く必要があります。このようにシールを溝に巧く入れるのは、ドライブ・シャフトが重いのでかなり「やっかいな」作業です。重ねて記載しますが、先に溝に入れて置けば良かろうと思うでしょうが、それではドライブ・シャフトが入ら無いのです!「写真」はピボットの内側の「溝」を示しています(溝にピントを合わせた)。 次に重要なことですが、ジョイントにはジョイント・グリースを使用するべきでしょう。ドライブ・ハウジングにはジョイント・グリースを使用している(一般的にはこれが当たり前)のに、ダブル・ヨーク・ジョイントにはマルチユース・グリースをグリース・ガンで入れるのは間違いではないのでしょうか? やたらに軟らかいグリースを沢山に入れるのは間違いであると私は考えています。 ◎ツェッパ型には当然ジョイント・グリースを封入しているでしょう!!!当たり前がそうでない所が、DSの整備にはあると思うのです。 ●この部分は用語が複雑で難しいので、カッコをして英用語を書き込みました。タイトルの Driveshaft=Transmission なのですから・・・611から分解図を載せようとも考えましたが、一層ゴチャゴチャしそうなので写真から想像して下さい。次項でより明確になるものと思います。
by citroenDS
| 2005-08-04 00:24
| DS の整備と解説
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