◆ コメント
前回高圧油圧系 [HYDRAULIC SYSTEM] の全体図を紹介ましたように、やっと残すはサスペンション・シリンダーを含む前後のサスペンション形式になりました。30 年以上前にはフロントのサスペンション形式に就いては、リーディングだとかダブル・ウイシュボーンだとかと議論が盛んでしたが、今日ではダブル・ウイシュボン(鳥の鎖骨形状の上下)の片側が省略されたものと決着が付いています。 ところで、DS と SM では同一部品を使っていますが、DS では前側が無く、SM では逆になっているので、DS では(2CV も同じ) 強い衝撃を前輪に受けるとアームが開いてしまうことが希にあるようです!前サスに就いてはその他には問題は無いのですが、私の知識の範囲で一般のテキストに書いて無い問題を記載しておきましょう。ご存知の通り前後共に左右関連がありますが(同一のフィード・ライン接続)、これではロールに弱いので、この配管の内部にはワイヤーが入っており、管内の流体の「抵抗を増加させていると記載されています( HOW CITROEN;J.P.CHASSIN ) Citroen has jammed a calibrated wire in that pipe)。同じ目的でハイドロ付きのジャガーの後輪でも細い内径のパイプを使っていた筈です。 私自身 DS のパイプ内部を点検していませんので、真実と断言は出来ませんが、ロールですと配管のインピーダンス上は直流に近いので→0 になり、その有効性は疑問になります。次に、これは広報誌;Le DoubleChevron;No:10に記載されていますが「全長に比して世界最大である」前輪のワイド・トレッドはアンチ・ロールの為であるとされています。後輪に関しては、トレーリング・アームと90度方向を変えて寝かせたサスペンション・ユニットに就いての「誤解」が大変に多く困ったことです。サスペンションは荷重を受けるものですから、当然直上で荷重を受ける「ストラット」が有利なのです。しかし、このストラットの為に「ストラット・タワー」がリヤ・トランク内に突出して邪魔な存在になることも明白であり、どの車でも無い方がスペース利用上有利です。有利なことばかりならば全車が採用する筈であり、二者択一のどちらを選ぶかは設計者の考え次第なのは当然です。 シトロエンは TRACTION AVANT (1934) 以来リヤはトレーリング・アームで通してきたことすら知らないで自動車記事を書くから困るのです!BXの時にはCGの当時の Test リポートを書いていたT氏の記事「プジョーのリヤ・サスを流用た・・・」に対して、一体どちらが歴史的に先にリヤ・トレーリング・アームを使ってきたのか?と質問しました。当時、私はMAZDAの技術者に質問して「トランクに突出しない代わりに、90 度作用する力の方向を変えるには、相当に構造上の強度を上げなければならず、コストや重量の問題があるので良い事だけを考えてもだめだ」と教えて頂いていました。 これらは全て拙著;WHY CITROEN Q&A;1989 に記載してあります。「大車林」にも「横方向に車輪が動き易い欠点がある」と記載されており、DS を見ても頑丈さに驚くのですが前輪駆動である点も採用し易いのだと私は考えていますが、今のような FF 時代にはあまり説得力はありませんか?? このように、知識も無しに簡単に記事をまとめてしまう、無反省体質を Kエディターに申し上げましたが、その場限りの言い訳に終始してしまいました。 最近も「週間朝日」に連載された「通といえばCAR」で K氏もCITROEN C 5 で「驚くほど広い荷室が現れる。通常の金属バネを使ったサスペンションではないので、側壁に余計な出っ張りがないのがきいている」(原文のまま)と記載してあるので、上記の内容を書いて質問しましたが何の返答もありません。 バネの質の問題ではなくてサスペンション形式の問題です!同じ文章の後半では「かっては油圧のお化けと陰口をたたかれたサスペンションも、5 年間、または 20万km のあいだ、特別なメンテナンスを必要としなくなった。古いハイドロ・シトロエンのオーナーなら、歯がみして悔しがる進歩だろう」(原文のまま)と!しかも、過去、4 台のシトロエンを所有したシンパというのだから呆れたものだ!「油圧のお化けといわれたのは] DS のこと、それも半自動の私が言う DXのことであって、油圧サスペンションでそれ程苦労した歴史は無い! のです。 一応、ディーラー技術課にこの件を問い合わせた所「これはメーカーの目指した目標 と考えて欲しい」とのことで、この間メンテナンス・フリーでもなければ、無料保証でも無く、そのような販売もしていないとのことであった。このように、シトロエンの記事は「面白可笑しく書けば良い」のだと長年決まってきたので、これで高い原稿料を頂けるのですからアリガタイことです! この際、追記しておきますが、シトロエン広報が作製した XM のデモ・ビデオ(ハイドラクティブサスペンションの 3 スフェアの働き)の「ハード」と「ソフト」は全く逆ですので気を付けて下さい! 3 スフェアの時→気室が大きくなるからバネは柔らかくなる→ホイール・ストロークは大きくなります。「ハード」では左右関連を断って4輪が独立になりますので(各輪が1 スフェアになります)良く見ていれば直ぐに間違いだ!と気付きます。もしも、仮定としてこの1 スフェア走行が長時間持続した時、サスペンション・シリンダーから油圧が抜けたらば、CPU は車高異常をどう修正する指示を何処にし、修正出来ない矛盾を解決するのでしょうか?意地悪な質問です!これはユーノス時代ですが、このデモ・テープを見てハイドラクティブ・サスペンションを誤認している執筆者がいるので困るんです。 上記したように「古いハイドロ・シトロエン・オーナーが歯がみして悔しがる程、サスペンション・シリンダー自体が壊れる筈はないので」あまり整備や修理に就いて記載することがないのが実状です。シール類の交換部品は J.B.M の詳細なカタログがあります。 ●参考 DS のサスペンションを設計した時に、恐らく4 輪にハイト・コレクター装備を計画したでしょう。しかし、ハイト・コレクターの項で述べたように、4 輪の高さ、変位速度等を一致させるのが如何に困難であるかを知ってあきらめたものでしょう。よって当時は、左右関連は結果でしかなかったと考えます。また、Le Doubl Chevron;No95に記載されている”ACTIVA”の記事でも車高センサーは前後各1個宛しか装備されていません。4輪の車高を独立に制御する意義がそれ程に重要であるとは考えられません。 XM等では前右側を選んで大よその車高を設定して、後は姿勢制御にまかせる考え方でしょう。だから4輪独立制御はあまりメリットは無いと思います。 また、1984;ECO 2000の プレス用資料では、前サスがMc Pherson Strutで、後は1スフェアの電子制御ハイドロ・ニューマチックであると書いてあります。恐らくパナール式の横置リーフの中央にハイドロ・ユニットを追加した簡易型がシトロエンの将来の小型車のサスになると「噂されされて」いましたから、この発展型として3スフェアを考えた方が論理的ではないかと思います。C1,C3などの小型シトロエン車が「このサス」でなかったことを非常に残念に思っています! ◎もう一つ追加しますと「ばね下重量」と「乗り心地」の問題があります。シトロエン車は皆ばね下重量は大きいものですが「乗り心地」は良いとされる[矛盾」が長らく続いています。人間の感覚がはたして何処まで信頼出来るものであるのか?私には多いに疑問なのです。 この件に就いては、CGのMEHARIの記事で「前後関連であるから」乗り心地が良いとインプレッションを記載してしまったのですが、実はこの車のサスペンション・シリンダーが溶接固定されていることを私は見て知っていましたから、事実を指摘して「いい加減」なことを書くなと訂正させたことがあります!人間の感覚程当てにならないものはありません。 [サスペンション・シリンダー] □解説 上記の次第ですので、”D”model No611,3-434/2 Rear Suspension Cylinders を載せるのみにします。3:Cylinder complete:5 410 163, 4:Piston rod:5 410 068, 5:Rubber bush: 5 409 990, 6:Rubber ring:5 409 960, 7:Securing plate:5 412 335, 8:Dust cover:5 410 161, 9:Felt washer:5 409 958, 10:Closing cup: 11:Rod pin 12:Dust cover 13:Cylinder nut 14:Thrust washer 15:Ball seat, 16:Joint teflon, 17:Joint, 18:Plate screw, 19:Rod ball, 20:Sealing ring, 21:Collar, [ダスト・カバーの交換] □解説 ダスト・ブーツ、コーヒーポットとも呼ばれるものです。パーツナンバー;5 410 161.$27:形状を変える必要がないからか 1954年の Traction Avant ”H”のリヤに付いているものと同一なのには、不思議な思いすら持ちませんか。J.B.M から買えば親切丁寧な図解の交換説明書が付いてきます。この交換方法でどちらにしようか迷うのが、ダスト・カバーのロッドの側をそのまま取り付けるのか、反転させるか(かなりきびしい!)で、結果的には「どちらでも良い」ことなのですが、何故、2通りの完成図があるのか不思議 なことです。 実際、交換する必要はなかったのですが、数年前にLHMが床面に漏れていたのをハイトコレクターからであったのを思い違いして交換しました。それも車検の前であったので、やや表面が老化していたので新品にしておきたかった訳です。その際に撮影した写真が「完成した写真」しか見つからないのでお許し下さい。それも照明電球のせいで色彩に難があります。これはSMとも共通ですが最初から最後までアコーディオン型にしなかったのはシトロエン流と言う事でしょうか。何とも不思議な形です。4のピストン・ロッドはダスト・ブーツのシリンダー側のバンドを外して、11のロッド・ピンも抜いて、シリンダー内から抜き出します。15のボール・シートの中にパチンコ玉が在り、ロッドの下端の楕円形の凹みとの間にはさまっています。この面が減り過ぎて変形していると、車高の上下動で「異音を発生」するのだそうで、その場合にはドリルで「整形」するように書いてあります。 ◆アドバイス 一般的には時々グリスを15に入れてやれば良いでしょう。外力で破れない限り老化して破れることは無いでしょうし、破れてもパンク修理で大丈夫だと思います。要は正にダスト除けでしかないのですから・・・事実シリンダーからのLHM漏れも殆どありませんでした。 ◎[サスペンション・ストッパー] Suspension Buffer ともいう。サスペンション・ストロークの両端を止めている円錐形のゴム製ストッパーです。車高のMAX とMIN を決めているのです。特に、油圧が抜けて車高が最低になった時に重要です。これが無くなってしまうことがあるようで、J.B.Mの説明書によりますと、無くなった際に生ずる被害が多数記載されています。シリンダー、やマフラーを壊すので観察して無い時には接着剤でとめるようにと書いてありますが、私にはこの円錐形のストッパーが見事に!変形してしまうことの方が心配になり、最初に書きました駐車時には必ず「ジャッキをかう」のを推薦した理由の一つになっています。Break用は2本ネジ付きです。円錐形、四角形、ネジ付き、$7〜15。「写真参照」
by citroenDS
| 2005-03-26 20:08
| DS の整備と解説
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◆ このブログはDSの整備、修理、広報誌 Le DOUBLE CHEVRON 、カタログ等の資料から[ DSの全て]に就いて解説をしています。 ▲保有資料は日本最大です。 ▲ 自分のDS23 Pallas '74の写真も紹介していますので、ご覧下さい。 ▲ミニチュアカーも貴重な資料として解説しております。 -PART-2- ◆ 平行して my "MINIATURE CAR COLLECTION" を載せていますので、[カテゴリ]の★-目次-☆を活用して下さい。 カテゴリ
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